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愛の形、形としての愛

クロガネーゼ(以下、ク)「ナターシャー」

勢いよく開いた自宅の扉にも驚くことなく、
執事は帰宅したクロガネーゼを迎えた。
当然、クロガネーゼは執事に対して見向きもしない。

ナターシャ(以下、ナ)「おかえりなさいませ。調子はいかがですか?」

ク「ナターシャ!お留守番させてごめんね。これ、お土産!」

ナターシャの挨拶への返答もせず、
クロガネーゼはナターシャに麻袋を渡した。
ラッピングのつもりか、なぜか目印のリボンをくくりつけてある。

ナ「え、あ、ありがとうございます。開けてもいいですか?」

ク「もちろん!着替えてもいい!」

ナ「・・・はい。」

ナターシャが袋を覗くと一着の服と角笛が入っている。

ナ「じゃあ、着替えてきますね。」

愛の形、形としての愛_d0002887_21392285.jpg

別室から着替えて出てきたナターシャは
眼を伏し目がちにしてクロガネーゼと目を合わせることができない。
愛の形、形としての愛_d0002887_21405759.jpg

ク「よく似合うよ、ナターシャ」

ナ「あ、ありがとうございます。でも、その、私・・・」

ク「なんだい?」

ナ「こんな服、今まで着たことなくって。男が生まれなかったもので父が私を男として育てたこともあって、その・・・」

ク「ナターシャには健康的な服が似合うと思って!」

クロガネーゼはニコニコとナターシャを無邪気に見つめている。
ナターシャはやはり目を合わせられない。
すこし熱い頬を両手で押さえている。

ナ「船長。お、お気持ちは嬉しいですし、もちろんこの服も嬉しいんですけれど、私、船長をお守りするための鎧を身にまとわなければならないと、以前・・・」

ク「そんなのはかまわないよ。太陽はサンサンと輝いてるし、窓の外では小鳥も鳴いてるし、ほら、子供も転んでる。全然問題ないよ!」

ナ「ハァ・・・」

ク「じゃあ、ちょっと交易品売ってくるから!」

クロガネーゼは大股で歩いて
やはり執事には見向きもせずに扉から出て行った。

ナ「次の航海にはお供したかったのに…、言えませんでした。」

ナターシャは自分の服を一度まじまじと見てから、
その場で一回転すると微笑んだ。

ナ「なんだか私じゃないみたい。フフフ。」

その頃、クロガネーゼは相場の暴落を知り、
落胆したままもうひとつの用事を済ませるべく、
タベラ枢機卿のところへ向かっていた。
by busk01 | 2006-12-12 21:55
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