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船乗り達の故郷

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そういうわけで、少し疲れ気味だったエマを留守番に残し、
コーネリアとインドへと旅立つクロガネーゼ。

クロガネーゼ(コーネリアは新しい副官を雇いに行くとは思ってないんだろうなぁ…)

今回の旅は有能な副官(もちろん、女の子w)がインドの方にいるという
船乗り達の噂が新大陸とは逆に舵を取らせたのだった。

コーネリア(以下、コ)「船長!やっぱり海はいいねぇ!船長はお金にこうるさいエマがいなくて羽根が伸ばせると思ってるだろうけど、そうはいかないからね!アハハ!」

コーネリアのはしゃぎようにクロガネーゼは
副官の話を切り出せずにいた。

船はまもなくケープに到着しようとしていた。

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クロガネーゼ(以下、ク)「やあ、おばちゃん、ひさしぶり。しかし、おばちゃんの前だと歴戦の船乗りも子ども扱いなんだな。」

アリデス(以下、ア)「なに言ってるんだい。あたしゃクロガネーゼちゃんが駆け出しだった頃から知ってるんだよ。」

ク「駆け出しの船乗りがケープまで来れたりしないよ、おばちゃん。」

ア「あんた、命からがらだったじゃないか。ケープぐらいでガタガタ言ってるうちは駆け出しさ。」

ク「違いねえや。で、おばちゃんの手料理を久しぶりに食べさせてもらってもいいかな?」

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夜の浜辺にクロガネーゼが座っている。
波音は規則正しくクロガネーゼの耳に届いている。

ア「子供達はもう寝たかい?悪いね、いつも面倒見てもらったりしちゃってさ。」

ク「ああ、寝たよ。俺達船乗りにとっちゃあの子供達は兄弟みたいなものさ。アリデスおばちゃんは俺達のオフクロ同然だもんな。」

ア「嬉しいこと言ってくれるね。そうさ、みんな私の子供みたいなもんさ。」

ク「だが、旦那さんを海賊に奪われてから何年になる?俺達船乗りが憎くはないのか。」

ア「・・・今更な事を言うね、この子は。でも、あの子たちが食べていけるのもあんた達船乗りがうちの酒場に来るおかげだ。違うかい?あの子たちが食べていくためには、あの子たちもあたしもゴチャゴチャ言ってられないのさ。」

ク「そうか…。」

ア「そうさ。それにあんたみたいなのもいる。船乗りだって捨てたもんじゃないさ。」

ク「海風はやはり冷えるな。おばちゃんはもう帰りな。子供達が起きちまうかもしれねえ。」

ア「ああ、あんたも風邪をひいちゃいけないよ。それから…」

ク「ん?」

ア「いつも高価なプレゼントありがとうね。だいぶ助かってるんだ。あんたにはほんとに世話になりっぱなし。」

ク「…気にしなくていいよ。」

ア「…うん、ありがとう。」

アリデスが戻ってからしばらくして、砂浜から街へと向かうクロガネーゼ。
海に一番近い木の影に誰かうずくまっている。

「ひっく、えぐ…、うぅ・・・」

ク「…コーネリア。ずっとここに?」

コーネリアは右頬だけを涙に濡らしながらうなずいた。

ク「なぜ、泣いてるんだ?」

コーネリア(以下、コ)「船長が、また、帰って、ひっく、こないから、また、く、口説いてるんだって思って、悔しくって、それで、追いかけてきて、えぐ…、アリデスさんが、あんなに、苦労してるとは知らなくって、それで、こんなことしてるあたいが、船長のこと疑ってたあたいが、嫌に、嫌になって、うっ・・・」

ク「コーネリア、人にはそれぞれ歴史がある。コーネリアだって苦労してきたろう?自分を責めることないさ。ほら、船まで送るよ。明日、おばちゃんに会ってから出発しよう。俺がおばちゃんにも話しておくからさ。」

コ「…うん。」

翌朝、
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ク「ちょ、おばちゃん!なに言ってんだよ!コーネリア、冗談、冗談だからな、な?

コ「それでは、あたいたちは出発します。アリデスさんもお元気で。」

ア「あいよ。気をつけていくんだよ。」

コーネリアの機嫌をうかがうように後ろを歩いていたクロガネーゼ。
突然、前を歩いていたコーネリアが振り返った。

コ「船長!あたいたちは胸を張って海へ漕ぎ出せばいいのさ!そうだろう?」

ク「…フン。ああ、そうだ。」

俺達の船が帆に風をはらむ。
インドに向けて出航だ。

(あ・・・、副官の話、し忘れたな。まあ、いいか。)
by busk01 | 2006-09-11 23:47
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